ついこの間MOMA、NY近代美術館に行ってきた。
実は僕は、工業デザイナーの川崎和夫さんのファンで、彼のデザインした車椅子がMOMAの永久展示品に指定されていると聞いたのでそれを見に行った。
川崎和夫さんとは、日本人で唯一アップルのコンピューターのデザインを担当したり、ラムズフェルド、パウエルなどアメリカ政府の要人が愛用しているメガネのKazuo Kawasaki ブランドのデザインを担当したり、医学博士も持ち、人工心臓のデザインなども行っている凄腕の工業デザイナーだ。
一回、カンブリア宮殿で特集されているのを見て以来、大のファンになってしまった。
そんなこんなでネットで彼のデザインを見るだけでは飽き足らず、自分の目で彼のデザインを見てみたいと思い、MOMAに行ったんだけど、肝心の彼の作品(車椅子)は見当たらない。。
美術館の人に聞いた所、永久展示品も数多くあるので、一部しか展示していないとの事。
非常に残念。しょうがないので切り替えて、工業デザインのコーナーをじっくり回って、色々な斬新的なデザインの商品を見てきた。工業デザインというだけあって、いわゆる「普通の商品」が無い。椅子一つを見ても、どこかに工夫や、斬新なデザインを取り込んでいる。
昔、金融研究のブログで「デザインがビジネスのUSPになる。」という事について書いた。要約すると、既存の商品にデザインを取り込む事によって、その商品の優位性を上げる事が出来るっていう事だ。
川崎さんは正にその先端を地で行っているような人で、一般的にはデザインっていうのは、格好良いとか、個性があるっていう風に捕らえられるけど、彼は機能性とかユーザビリティーを究極に追求した物がデザインという考えを持ってる。だから、彼のデザインしたメガネは、極限まで軽量化してあるので信じられない位軽い。さらに、格好良い。彼のメガネを掛けていても耳の上が痛くなりにくいそうだ。
そういう機能性とユーザビリティーを追求して、さらに格好良い商品がMOMAにはたくさんあった。今回の訪問で最も僕が目を引いたのが、防犯用の鉄格子、チェーン、そして針金。
普通鉄格子といえば、こんな感じに泥棒が塀をよじ登るのを防ぐために、先っちょを尖がらせた物が目立つ。
針金もそう。ブロンクスのビルの上とか外部からの侵入者を防ぐために尖った物が付いてる針金が張り巡らされている。
確かに、NYの治安の悪い所では、こういった工夫が必要不可欠なんだけれど、こういう概観を町に作る事は、町自体が危険である様に錯覚させ、殺伐とした雰囲気を作る。僕はNYの治安が悪いといわれている所に住んでいたけれど、殺伐とした雰囲気こそあるものの実際はそこまで危険では無かった。
実際は、日本の昭和初期の下町の様な(多分)、助け合いのあるコミュニティでそんなに犯罪も多くない。それでもビルの上がこういう針金で固められ、鉄格子などがあればどう感じるだろう?初めて来る新参者には、恐怖感を与えるし、当然町自体の雰囲気も良くない。
そこでMOMAで見つけた解決策が、特別なデザインを施した鉄格子と、チェーンと、針金。
下の写真を見れば分かるとおり、鉄格子の尖った部分は、ペンギンとか、色んな動物が並んでいて可愛い感じに仕上がってる。
そして、このチェーンはハート型で普通のチェーンが持つ無機質さが消えて、このチェーンを見るだけで他の感情が芽生える。
そして針金は、鋭い刺の代わりに、鋭い羽を持った蝶が針金の先にちりばめられている。
これが、危険だと言われているNYのBRONXで至る場所にあったらどうか? 犯罪者や侵入者がこの鉄格子や針金を見てどんな感情を持つだろうか?きっと普通の無機質な鉄格子や針金を見るのとは違った感情を起こすはずだ。
アメリカでビジネス書のベストセラーになった「ティッピングポイント」でも書いてあるけれど、地下鉄の落書きを消す事や、アイラブNYのTシャツを広める事によって、大衆心理が変わり犯罪率が下がったりする事がある。 本当に小さな事でもバタフライエフェクトの様に大きな変化につながる。
僕はこの鉄格子、針金、とチェーンにそれ位の大きな可能性があると思う。コストだって、大量生産すればそんなに掛からないはずだ。
防犯グッズに、可愛いデザインを施す事によって、防犯機能を増加させ、街の景観を楽しい物にしてくれるこの商品、僕の見る限りNYではまだ、この価値観は浸透してない。こういうデザインが、新しい価値観を生み防犯業界を変え、世界を変えて行くと思うし、しっかりとUSPを持っているからビジネス的にも成功しそうだよね。
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